1990年、バブル景気の日本はその世相を反映するかのように浮かれたコミックソングがヒット曲として世に溢れた。
例に挙げるならB.B.Queens『おどるポンポコリン』、牛若丸三郎太(時任三郎)『勇気のしるし〜リゲインのテーマ〜』、たま『さよなら人類』、晴山さおり『一円玉の旅がらす』、オヨネーズ『麦畑』、鷲尾いさ子と鉄骨娘『鉄骨娘』…本当に景気が良い時はおそらくこのようなコミックソングが溢れるのでしょうね。
一方でアルバムは松任谷由実、サザン、渡辺美里、杏里、岡村孝子、今井美樹、久保田利伸、長渕剛などのアーティストたちがヒットさせているのだから面白い。
翌年のブレイクに向けてB'z、ドリカムら次の時代のアーティストも頭角を現している。
それからこの時期はCHAGE&ASKAや小田和正さんといったベテランアーティストが純愛を題材にしたトレンディドラマの主題歌シングルのヒットで息を吹き返している。お金に翻弄されたバブルの終焉に人々が飛びついたのが純愛だったというのも人間というものの本質をよく表しているのかも知れない。

そして1992年頃から始まったビーイング系の時代。ZARD『負けないで』、T-BOLAN『おさえきれないこの気持ち』『すれ違いの純情』、B'z『愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない』、DEEN『このまま君だけを奪い去りたい』、WANDS『時の扉』『愛を語るより口づけをかわそう』、大黒摩季『チョット』『別れましょう私から消えましょうあなたから』などなどサビに日本語タイトルを持ってくる傾向にあったビーイング勢。
小室さんは『寒い夜だから』『一途な恋』『愛がもう少し欲しいよ』でサビの日本語タイトルで呼応してます。
それに取って代わるように1994年に躍進したエイベックス。
その原動力は間違いなくtrfをプロデュースしたTKこと小室哲哉の躍進でもある。

TetsuyaKomuro

trf 『WORLD GROOVE』
小室さんがプロデュースしたアルバムで初めてミリオンセラーを記録した。小室さんと共にエイベックスが駆け上がってゆく時期の象徴ですよね。
レコード会社がCDのパッケージに記載する注意文や説明の雛形がまだできていなくて非常にシンプルに発売元や記号が表記されていたことを思い出します。
『WORLD GROOVE 3rd.chapter (main message)』はやはり人の関係性を取り上げた曲で小室さんが時代を超えてテーマに据えているポイント。
個人的にも今でもテンション上げてくれる曲。


avex trax エイベックス


TM NETWORKというパーマネントなバンド(ユニット)の中心メンバーという顔とは別に中山美穂、小泉今日子、観月ありさなどアイドル系への楽曲提供で実績を重ね知名度を上げていった小室哲哉。
それまでは作曲家といういわば裏方のポジションにいた彼だったがtrfの成功や篠原涼子のヒットでその肩書は音楽プロデューサーとして一般に浸透してゆくことになる。
小室さんがプロデュースしたアーティストたちは小室(TK)ファミリーと呼ばれる。

trf『dAnce to positive』
前作からたったの1年の間に大出世したtrfは次々とシングルがミリオンセラーになった。今作のリードシングル3ヶ月連続発売でなんと3枚ともがミリオン!
インスト含めて全曲小室哲哉作曲である。


avex trax エイベックス


篠原涼子 『Lady Generation〜淑女の世代〜』
古巣ソニー・エピックへの置き土産。
弟子の久保こーじ曲もあり小室純度は高くはないもののアイドルのアルバムとしては充実の仕上がりになった。


Epic/Sony Records Sony Music


小室さんの最盛期といえばやはり1995年からの数年である。自身がメンバーに加わったglobeと華原朋美がデビューした年、そしてライジングプロからの依頼で安室奈美恵のプロデュースを受けた年でもある。

1 2 3 4 …
イントロで湧き上がる興奮、ときめき、近未来感。シンセ、リズム…そしてコーラス!小室哲哉印全開のナンバー。
華原朋美のデビューシングル『keep yourself alive』である。
今思うと相当チカラ入ってたんだなぁと感じる。

そりゃそうだよね…自分の名字を逆さ読みしたレーベル ORUMOK(オルモック)の幕開けを告げる曲。はじまりの歌。
企画品番はPIDX-1001とパイオニアが使っていたPIDLではなくオルモック専用のものを用意させた。
小室さんが華原朋美をエイベックスではなくオルモックでやったのはなんでだろうと考えると、もちろんお金とかビジネス的な側面はあるにしても何もない更地から始めたいという欲求が何処かにあったんじゃないかなと思うんだよね。

唐突に何?と思われた方失礼しました。
最近、小室哲哉プロデュースの90年代の作品を改めて聴き返しているんですよ。
あのとき何をしてたな、あんなことがあったな、あんな人と関わってたなとかリンクされた記憶を旅してる気分になります。

『globe』
自身がメンバーとなったユニットglobeではTM NETWORKでは成し得なかった圧倒的な売り上げを記録した。

avex trax エイベックス


華原朋美 『LOVE BRACE』
小室哲哉フルプロデュース。恋人でもあった華原朋美をいかに輝かせるかを考えて作り上げた傑作。ダブルミリオン。

ORUMOK RECORDS パイオニアLDC


安室奈美恵 『SWEET 19 BLUES』
時代のアイコンになった安室奈美恵。アイドル的な部分とアーティスト的な部分を上手く融合させた成長記録。久保こーじ曲も良く作用した。

avex trax エイベックス


globe、華原朋美、安室奈美恵は小室ファミリーのど真ん中。シングルもアルバムも大ヒットして小室哲哉ブランドを高めてゆきました。
1996年にR&Bサウンドを取り入れデビューしたdosは『Baby Baby Baby』はヒットしたものの余りにも時代が早すぎたね。
宇多田ヒカルが1998年12月なのでその早さが分かると思う。
唯一のアルバムは個人的には本当にお気に入り。♪トゥルルー

dos『chartered』
オルモックレコードからの発売だったが小室哲哉純度はさほど高くない。だからといって出来が悪い訳ではなくアルバムとしてはかなりの秀作。

ORUMOK RECORDS パイオニアLDC


安室奈美恵『Concentration20』
今作では12曲中10曲(うち1曲はインスト)を小室哲哉が単独で作曲、編曲しており小室純度がかなり高い。よりアーティスティックに進化する安室奈美恵を描写した。作詞はMARCに多くを任せたことで余裕が出たのかも。

avex trax エイベックス


華原朋美『storytelling』
大ヒットした1stに続いて小室哲哉がフルプロデュースした2ndアルバム。アルバム向け新曲も多かったが2曲がリカットシングルになったので結果的に6枚のシングルが収められている。

ORUMOK RECORDS パイオニアLDC


華原朋美『nine cubes』
小室哲哉フルプロデュースの3rdアルバム。賛否両論ある作品だがこれを以って華原朋美のプロデュースは幕を降ろした。

ROJAM / wea japan ワーナー


小室さんが打ち上げた数々の花火は時代という空を見上げる多くの観衆を魅了した。
けれどもブームというものには必ず終わりが訪れ、また次のブームが新たに訪れる。
MISIAや宇多田ヒカル、倉木麻衣などJ-R&Bアーティストの台頭、aikoや椎名林檎といった女性アーティストの登場がそれだ。
1996年にはdosを投入し、時代を先取りしていた小室さんでしたがR&Bに対応することには積極的ではなかった気がします。
もちろんMISIAであれ宇多田ヒカルであれアルバムの売り上げがものすごく高かったから打つ手がなかったのかも知れないし、プライベートの不調とか色々BADな状況が重なったりしたのかもね。
鈴木あみやKiss Destinationでそのエッセンスをなぞったりはしたけどね。

鈴木あみ『SA』
プロデューサー小室哲哉のブームが勢いを失くしてゆくなか、 オーディション番組で見つけた鈴木あみ。リードシングル3枚は見事な小室哲哉印だった。

TRUE KiSS DiSC Sony Music


ここに挙げた作品はほんの一部。
小室さんがプロデュースしたアルバムは他にも沢山あります。
改めて聴くと懐古的な意味だけじゃなくて、気付かなかった良さとか特徴があるんですよね。
もちろんhitomiとかTRFとかとんでもなく手抜きだろうって言いたくなるものもあったりしますよ。
改めてもう一度聴いてみるのも良いかも知れませんよ。

小室さんが音楽雑誌CDでーたかワッツインのどちらかで『一途な恋』のインタビューを受けていた記事が記憶に残っています。
『一途な恋』はアルバムのパイロットシングルでこのあと続々シングルを出してゆく的なことを答えていたんです。
僕はその言葉を真に受けて期待していたんですけどね…そのあとはまさかの終了シングルということでTM NETWORKに深入りする機会はありませんでした。
でもあの時、話していた曲たちはtrfに割り振られて『寒い夜だから…』とかに化けたんじゃないかと妄想したりね。

だからTKにはいつも大きな夢を語っていて欲しいなって思うんだけどあの件以降エイベックスのいち作曲家みたいになったときはがっかりしたよね。
コントロールされるのが一番嫌いな人だと思うから小室さん自身苦痛だったんじゃないかな。やっぱりTKにはちょっと偉そうにしてて欲しいよね。途方もない夢を語ってて欲しい。

その功績は歴史に残るものですから。