WANDS 4th Studio Album
PIECE OF MY SOUL
B-Gram RECORDS
(P) 1995 Being,Inc.
1995年4月24日発売(CD : JBCJ-1002)

wands

Produced by B.M.F
最高1位・約96.4万枚

葛藤の中、守り抜いた魂の欠片
WANDS渾身の4thアルバム


TL

1. FLOWER
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩・編曲:葉山たけし
(C) 1995 Be Kikakushitsu

『Secret Night〜It's My Treat〜』を経たからこそ出せたような気がする。

2. Love&Hate
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

鏡を覗き込み映し出された自分自身のことを歌っている。好きなものと嫌いなものどっちも向き合って本当の自分を見つけたら、そこには本当の自分の姿が映るだろうと結ぶ。登場人物は自分自身のみという言葉のマジック。
メロディーのキャッチーさや効果的にキーボードを入れてたりして、かつてのWANDSサウンドに寄せてる感はあるけどここくらいまでが限界なのかな。


3. 世界が終るまでは…
(作詞:上杉昇・作曲:織田哲郎・編曲:葉山たけし)
(C) 1994 TV Asahi Music Co.,LTD. & Be Kikakushitsu

1994年6月8日発売の8thシングル。最高1位、122.1万枚。
イントロはピストルの発砲音を連想させる。文学的な歌詞により作詞家としての上杉昇にスポットライトが当たった曲でもある。
テレビ朝日系アニメーション『スラムダンク』エンディングテーマ。


4. DON'T TRY SO HARD
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

アコギの音色は優しくもあり哀しくもあり不思議だ。
何とも言えない郷愁が溢れる寂しい曲。
余りの寂しさに後半ドラムが入ってきて安心するレベル。


5. Crazy Cat
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

雰囲気的にB'zっぽいなと感じた。

6. Secret Night 〜It's My Treat〜
(作詞:上杉昇・作曲:栗林誠一郎・編曲:池田大介)
『It's My Treat』作詞:栗林誠一郎
(C) 1990 Be Kikakushitsu

1995年2月13日発売の9thシングル。最高1位、63.1万枚。
1990年に発売された栗林誠一郎さんのアルバム『SUMMER ILLUJION』に収録されていた『It's My Treat』の再利用。(楽曲提供でははく上杉昇さんの希望によるカバー)
歌詞は書き直しされているわけですが、栗林誠一郎へのリスペクトだろうか『It's My Treat』をフレーズは残している。
TBS系『COUNT DOWN TV』オープニングテーマ。


7. Foolish OK
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

この手の曲って一時期のビーイングにはよくあったような。B'z『ZERO』、前田亘輝『Try Boy, Try Girl』、PAMELAH『純情』とか。
サウンドは別にしてメロディーはポップ。


8. PIECE OF MY SOUL
(作詞:上杉昇・作曲:柴崎浩、上杉昇・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

アルバム表題曲。
今作では唯一、上杉昇さんが作曲に参加しているアルバム表題曲。
上杉昇特有の哀愁と熱気が交互に混ざり合っている。


9. Jumpin' Jack Boy 〜Album Version〜
(作詞:上杉昇・作曲:栗林誠一郎・編曲:葉山たけし)
(C) 1993 Be Kikakushitsu

1993年11月17日発売の7thシングル。最高2位、82.7万枚。
オリジナルはキーボードをふんだんに盛り込んだ典型的なWANDSサウンドでしたが、アルバム収録にあたって装いを新たにバンドサウンドに生まれ変わっている。
MIZUNO スキーウェア インパルス CMソング。


10. MILLION MILES AWAY
(作詞:上杉昇・作曲:木村真也・編曲:葉山たけし)
(C) 1995 Be Kikakushitsu

キーボード担当の木村真也さんが今作で唯一作曲。ロードムービーを観ているかのような渋いギターとリズムマシーンが絡まり合ってドラマティックなイントロから1コーラス。重厚なリズム隊とエレキ、シンセが介入してくる2コーラス。
葛藤を抱えながらも未来へ歩んでゆこうという決意を壮大なスケールで歌う。


RV

BEST OF BEST 1000 WANDS
WANDS
B-GRAM RECORDS(J)(M)
2007-12-12



ビーイング系が流行り出した頃に人気アイドル中山美穂さんとコラボレーションした『世界中の誰よりきっと』が大ヒットしたことにともない、知名度と人気を集めたWANDS(ワンズ)。
ポップでロック時々ダンサブルみたいなサウンドを展開し、幅広いファン層を引き寄せることに成功した。
数字的な成功とは裏腹にヴォーカル上杉昇さんは、自分が演っている音楽にに疑問を持ち始める。
そもそも彼がビーイング音楽振興会(音楽学校みたいなもの)の門を叩いたのは憧れていたラウドネスのような音楽をやるため。
ラウドネスはビーイングから出ていたので、ビーイングに入ったアーティストの動機として同じような理由を挙げるアーティストは少なくない。

ビーイング内で『売れるアーティスト』の道を突き進んでいた彼にとって、売れる音楽をやらされているという感覚は次第に許容できないものになっていったのではないだろうか。

栗林誠一郎の『It's My Treat』を気に入り、志願してカバーした9thシングル『Secret Night 〜It's My Treat〜』ではそれまでのWANDSとは大きく異なるロックサウンドの楽曲となった。
これがチャート1位となり、60万近いヒットとなったことは上杉さんにとっては『演りたいことを演って得られた評価』だったから嬉しい出来事だったようだ。
その流れで作り始めたのが今作だ。

基本的にロックに重きを置いた作品であり、シングル曲を除けば全てがメンバー作ということで、ここには彼らの『演りたい音』が詰め込まれている。
リズム隊は渡辺直樹(Bass)さんと青山純(Drums)さんががっちりと務め上げている。
チャートで1位を獲得し、ミリオンセラーに迫る売り上げとなったので、本人達はファンに受け入れてもらえたと思ったのではないだろうか。
シングルの作曲家がビーイングが誇ったメロディー・メーカーである織田哲郎、栗林誠一郎というのがなんとも言えない気持ちになる。

その後、よりコアな方向のロックに突き進んだ彼らはシングル『Same Side』『WORST CRIME』をリリースする。
その次のシングルも出来ていたが、プロデューサーが持ってきた次のシングル候補はポップでロックなあの音楽だった。
これを契機に上杉昇さんは脱退を決意、続いてギターの柴崎浩さんも脱退する。
つまりこの時にWANDSは解体したのだ。
残されたキーボードの木村真也さんに新メンバーを加えて第三期WANDSをやったりもしたが、かつてのような人気は得られなかった。

『売れる音楽』=『自分の演りたくない音楽』という葛藤の中で苦悩しながら産み出した魂の欠片が此処にある。
主にアレンジを担当した葉山たけしさんは製作陣とアーティストの板挟みの中できっと頑張ったんだろうなぁと思う。

個人的評価 ★★★★★★★★★☆ 9