エッセイ:僕の見た小室哲哉
プロローグ第一章第二章第三章エピローグ

小室さんに関する独断と偏見のエッセイを書き終えました。(もう少し加筆はすると思います)
彼の歴史は書籍なり、ミュージックプログラムなり、もちろん熱いファンサイトなどで総括されています。
私のような、ライトな…小室哲哉ファンがいくら書いたところで何になるわけでもなく。
だけれども、こういう飛び抜けたプロデューサーはもう出てこないと思うんですよね。
ビーイングの長戸大幸さんとかもそうなんですけどね。
たまたま彼らが働きまくった時代に居合わせたこと、そこはラッキーだったよね。

さて、このエッセイのエンドロールは、私の個人的な思い出で締めくくらせていただこうと思います。

close to the night

あの夏、5年ぶりくらいだろうか。父に会うため東京のとある港に僕は降りた。
たまたま見つけたサブウェイのサンドイッチを初めて食べました。サブウェイクラブという欲張りなサンドイッチだ。
持ち帰り用のオイル&ビネガーと紙ナプキンが透明のビニル袋に入れられ、田舎育ちの僕にはどこかお洒落に感じられた。
もう25年近く前になるのか…まあ、僕も歳をとるわけだ。

父の家で数日過ごし、あちらの仕事の都合もあって予定より早く帰らなければならなくなった。
帰る前に秋葉原に寄りたかったので着いてきてもらって、何かを買った。何かは忘れた。
お茶でも飲んで別れるつもりでいたが、父親はすぐにでも行くといった感じで心ここにあらずという。
その時無性に腹が立って、もういい!と僕はその場を去った。
父親はそのまま行ってしまったので、僕は東京迷子に。

駅で路線図を見てみると、秋葉原から新宿まで行ける電車があることに気づき、急に胸が高まっていった。
やはり以前から気になっていた『新宿2丁目』に行ってみたい、チャンスだと思い立ったのだ。
新宿駅には着いたものの、土地勘があるはずもなく、新宿西口に出てしまい、ちょろちょろしてたと思います。
どこをどう歩いたのか自分でも思い出せません。新宿中央公園のほうまで来てました。今思えば、西新宿五丁目のほうですよね。
歩き疲れたので路線バスの停留所を見つけ、バスで新宿駅西口までもどったのです。
今でこそ新宿西口は賑わってますけど、当時はほんと路線バスのターミナルっていうか…人の流れもそんなに多くなかったので、どこか寂しい印象だったんですよ。

次は東口方面をまた彷徨います。
あの頃は歩くのが好きだったので、全然苦ではなく、目的地を探してフラフラしてました。
ちょうど新宿御苑の近くに来た時くらいから、空気が変わったのが分かって、それらしき人との遭遇率が上がったので近くに来てるということは分かってました。
餃子の王将(今はない)の辺りで新宿2丁目がすぐそばだと確信し、おそるおそる仲通りに入っていきました。

夏の夜の蒸し暑さで、シャツの背中が汗でペイントされていた。
道端でオレンジの風に吹かれて、行き交う人達を眺めていた。
時々歩いたりしながら、長年、胸の奥にしまってきたものが解けていくような感覚がした。

小さな曲がり角で、ひと気を感じて立ち止まる。
一人はそれほど歳の離れていない細身の男性、もう一人は少し歳上のぽっちゃりした男性。
『一人?飲みに行こうよ!』
軽くナンパされ、二人と飲み屋に行きました。
圧倒的に10代なんですけど(笑)カシスソーダ何杯かで軽く酔ってました。
その夜は三人でナッツに入りました。軽く、本当に軽めにやって三人とも寝ちゃいましたね。

翌朝、何もなかったかのようにシャワーを浴びて、支度をして、朝マック。
東京在住の細身の男性Aは当時21歳、九州から出てきていたぽっちゃりの人は35歳くらいだったかな。
ぽっちゃりさんが先に帰って、Aと二人になりました。思えば、夜寝る前に絡んだのは主にAだった。
このまま何もなかったように忘れていくのかなと少しブルーになっていたところ、彼のほうから連絡先の交換を申し出てくれました。

それから電話で話すようになってお付き合いすることになったのです。
遠距離だったので時々真夜中に電話したり、手紙を交わしあったりくらいしかできないんだけど。
誘惑が多い東京で暮らす彼と何もない田舎で暮らす僕。
田舎とは比較にならないほどの出逢いがあることは判っていた。
そうあの場所でなら、男女が出逢うような感覚で、いやもっと手軽に男同士出逢うことができる。それは体のことも含めて。
どこどこ行ったよ、なんて話を聞きながら、いつも不安な気分になっていたことを思い出す。
時には子供じみた行動や彼を傷つけるような言葉を言ってしまったこともあったと思う。
ちょうどその頃に、よく聴いてたのが大賀埜々の『close to the night』とdosのアルバム『chartered』、そして槇原敬之のアルバム『UNDERWEAR』でした。
ノンケに片想いとかを除けば、ちゃんと男を好きになったのは彼が初めてでした。
可笑しいくらいウブで、上京したら会いたい時に会えるね、とか本気で思ってました。
思い出せば本当に幼い自分のことばかり浮かんできてしまい、恥ずかしくもあり反省もいっぱいですよ。
結局彼とは別れるのですけど。

傷つけられたこともなかったとは言いません。
きっとありました…酷い仕打ちもありました。
僕と別れた直後に『新宿にできた高島屋のHMVで山咲千里がイベントやってて彼と行ってきたよ』なんて報告されて、心が折れたんですから。(笑)
時が経って、色を失くし、記憶の遥か彼方に消えましたから、もう彼のために使う感情はないけれど。
英語の道は極めることができたのでしょうか?…

誰もわからない答えが見つからない
夜は隠し事が闇に消え
それぞれお互い
助けられてる2人がいる
lonely lonely loneliness

ささえ切れずに
投げ出したくて
何もかも捨てるのは楽でも
あの曲がり角をいつも奇跡を
信じて歩いてく

Lyrics by Tetsuya Komuro
Music by Naoto Kine
(C) 1996 avex music publishing Inc.

あのころ、朋ちゃんやら安室ちゃんの曲もたくさん聴いたけどね、強烈に印象に残っているのはこの曲ですね。