宇多田ヒカル 1st Studio Album
First Love
EASTWORLD / 東芝EMI株式会社
1999年3月10日発売(CD : TOCT-24067)

▼カタログ
・15th Anniversary Edition-:2014年3月10日発売(CD&DVD: TYCT-69016)ユニバーサルミュージック・REMASTERING
・15th Anniversary Deluxe Edition- [プラチナSHM]: 2014年3月10日発売(3CD&DVD: TYCT-69016)ユニバーサルミュージック・REMASTERING

hikki

Produced by Akira Miyake & Teruzane Utada
最高1位・約765万枚

TL

1. Automatic -Album Edit-
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:西平彰
(C) 1998 Sony Music Publishing Inc.

1998年12月8日発売のデビューシングル。8cm版最高4位、77.2万枚。12cm版最高2位、129万枚。
リズムはR&Bを意識しているものの、歌謡曲のワビサビメロディーを乗せてるところが斬新。DNAレベルで染み込んでるのだろうか。

Additional Arrangement by 河野圭
Rhythm Arrangement by Taka&Speedy

2. Movin' on without you
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:村山晋一郎)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

1999年2月17日発売の2ndシングル。12cm版最高1位、87.9万枚。8cm版最高5位、34.6万枚。
ハウスのテイストを取り入れ、新たな一面を見せてくれた。
ワイドショーでよく取り上げられていて、ミュージックビデオの衣装ひとつが話題になる、そんな状態だった。


3. In My Room
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:村山晋一郎)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

一転、クールなR&Bナンバー。
随分と大人びた10代の恋愛。

Programming:飯田高広

4. First Love
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:河野圭)
(C) 1999 NICHION, INC.

タイトル曲。1999年4月28日に3rdシングルとしてリカットされている。12cm版最高2位、50万枚。8cm版最高6位、30.3万枚。TBS系ドラマ『魔女の条件』(松嶋菜々子 主演)主題歌。
スタンダード性の高いバラードナンバー。シングルに収録されているサックスをフィーチャーした別のバージョンがこれまた良いんです。
この部分の歌詞好きですね。
You will always be inside my heart
いつもあなただけの場所があるから
I hope that I have a place in your heart too
Now and forever you are still the one


5. 甘いワナ 〜Paint It, Black
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:西平彰)
Paint It, Black / Written by Mick Jagger and Richard Keith (C) 1986 WESTMINSTER MUSIC and ABKCO MUSIC INC
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

曲の後半にローリングストーンズの『Paint It, Black』のフレーズを挿入している。

6. time will tell
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:森俊之、磯村淳)
(C) 1998 Sony Music Publishing Inc.

『Automatic』と両A面として発売されている。

7. Never Let Go
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:河野圭)
Written by Hikaru Utada, Miller Dominic James, STING, Summer Gordon Matthew
(C) 1999 EMI Music Publishing, (C) 1993 MAGNETIC PUBLISHING LTD, STEERPIKE LTD.

10代にしてこういう歌詞、曲が作れたというのは、さすが。ひとりTLCみたいな。
ドラマ『魔女の条件』挿入歌。
STINGの『Shapes of my heart』のフレーズを使用している。

Programming::飯田高広

8. B&C -Album Version-
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:西平彰)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

2ndシングルのカップリング曲。
B&CとはBonnie&Clydeという実在したアメリカの犯罪者カップルのこと。
もちろん犯罪者カップルになろう!っていう歌ではなく、彼らのように一心同体みたいな揺るがない結束、信頼のあるカップルになりたいというささやかな願いが込められているのではないだろうか。
恋愛した時のパワーを感じさせてくれる。

Rhythm Arrangement by Taka&Speedy

9. Another Chance
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:西平彰)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

個人的に、かなりというか相当好きな曲。
メロディーは『Automatic』に近いアプローチではあるけど、哀愁のあるアレンジと曲の世界観が僕が勝手に想う宇多田ヒカル像と合致する感じがある。
洋楽っぽいバッキングもカッコいいよね。

Rhythm Arrangement by Taka&Speedy

10. Interlude
(作詞:作曲:宇多田ヒカル)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc..

のちに『言葉にならない気持ち』という楽曲で完成形を見る。

11. Give Me A Reason
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・編曲:西平彰)
(C) 1999 Sony Music Publishing Inc.

R&BでもHIP HOP寄りのバッキングが印象的。
これをシングルにしても良かったんじゃないかって思ったり。


11. Automatic -Johnny Vicious Remix-
(作詞:作曲:宇多田ヒカル・Remixed by Johnny Vicious)
(C) 1998 Sony Music Publishing Inc.

ボーナストラック。フロアを意識したリミックス。
そういえば倉木麻衣もJohnny Viciousのリミックスが1曲くらいあったかも。




RV

90年代後半の歌姫ブームに呼応するかのようにデビューし、ソファーダンス(笑)でシーンの最前線に立った宇多田ヒカルの処女作。
もちろん現在も破られていない日本史上最高の売り上げのアルバム。

意外かも知れないけど、宇多田ヒカルってSPEED以降のアーティストなんですよね。
SPEEDといえば、アメリカのR&B/HipHopユニットTLCをヒントに売り出されたと言われていて、メンバー自身『TLCが好き』と公言していた。
SPEEDの1st『Starting Over』をたまに聴くと、自分が思ってた以上にR&B/HipHopのリズムが入ってることに気付く。スネアが強いんですよ。
そういう海外の流行、息吹をいち早く取り入れたのが小室哲哉(安室奈美恵、dos)とか伊秩弘将(SPEED)で彼らが地ならしをしていたから、その後のR&B歌姫たちが活動しやすい土壌が出来ていたのではないだろうか。
シーンにMISIAが登場したのも、ごく自然なことだったのかも知れない。

では宇多田ヒカルが数多いる歌姫たちの中で際立ったのはなぜか?
一番は全ての作詞も作曲を彼女が自ら手がけていたこと。
とてつもない才能に日本中が驚き、興味を持ち、称賛した。
デビュー曲の『Automatic』がR&Bのフォーマットにも関わらず、ワビサビ効かせた歌謡曲メロディーだったというMAGICも今にして思えば、母 藤圭子の遺伝子からきたものなのかなと。

彼女が、あるお笑い芸人がホストの音楽番組に出演している時のこと。
彼女を見ていてよぎるものがありました。
きっと幼い頃から周囲の大人の顔色をうかがうように育ってきたのかな?と。
相手が望むようは反応をあえてしていた気がしたんです。
なんでもかんでも我慢することが当たり前と思わざるを得なかった子供は、いつのまにか良い子でいることを演じるようになってしまう。
無理して面白いことを言ったり、楽しいふりをしたり、演じてることも忘れてゆく。
でもそれは、心にとっては大きなストレスだから、気付いた時につらいと思う。
素晴らしい才能を与えてくれた大切な人が心の重しになっていたとしたら悲しい話ですね。
でもそれを乗り越えて彼女は生き残っている。

1stアルバムとして、完成度はやはり高いです。
10代の少女がこんなことをやってのけたのだから、すごいという評価しかできません。
このアルバムの時点でR&BだHipHopだというジャンルは意識してないと思います。
ロック専門誌が浜崎あゆみを表紙で取り上げたことがありました。売り上げのため?圧力?…何にしてもあの雑誌はあれで矛盾を抱えたと思います。
そもそも音楽のジャンルって、あくまで味付けでしかなくてアーティストそのものをカテゴライズする呼称にはなり得ないと僕は思ってますから。
その後の宇多田ヒカルを見ても、R&Bシンガーとは呼ばないし女性アーティストとしか言えないですよね。

追記
宇多田ヒカルのフォロワー的に登場した倉木麻衣について触れておきます。
この作品の後に、倉木麻衣の1stアルバム『delicious way』を聴いてみると非常によくわかるんですが、宇多田ヒカルの『声』はやはり憂いを秘めた切実さみたいなものを感じるのですが、倉木麻衣の『声』は包み込むような素朴な優しさを感じます。
売り方は模倣したかも知れませんが、決して似ているとは思いません。
倉木麻衣も散々言われましたし、苦しんだこともあったでしょう。でも現在も歌い続けています。
目指してた『光』を見つめながら。
いつか二人の競演なんて実現しないかな。

個人的評価:★★★★★★★★★☆ 9.5