松任谷由実 - アルバム - パールピアス
松任谷由実 13th Studio Album
PEARL PIERCE(パール・ピアス)
EXPRESS / 東芝EMI
1982年6月21日発売(LP : ETP-90175 / CT : ZH28-1200)

▼カタログ
・CD化:1985年6月1日発売(CD : CA32-1139)
・リマスター:1999年2月24日発売(CD:TOCT-10646)
・品番違い:2013年10月2日発売(CD:TYCT-69043)

pp

Produced by Masataka Matsutoya
プロデュース:松任谷正隆
All Arrangement by Masataka Matsutoya
All Written by Yumi Matsutoya
最高1位・約48.8万枚

TL

1. ようこそ輝く時間へ
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

大人になっても感じる夏が終わる寂しさを訪れた遊園地で終わっていく夏の寂しさ、過ぎていく時間の寂しさを大人の宿題と歌う。
気怠いAORサウンドが夏の終わりの名残りを連想させる。エンディングのコーラスが素敵。


2. 真珠のピアス
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

実質的なタイトル曲はファンからの投書にあった経験談をヒントに作られたという二股かけられ女がふられる歌。
セットでなければ役に立たないもの、意味がないもの…すなわちそれは主人公の『私』が彼のベッドの下に置いてきた片方の『真珠のピアス』であり、『私』を捨てて新しい人と結婚してゆくであろう彼の『離れた心』を指しているのではないだろうか。
高台の部屋の広告を眺めながら、いつか住もう!と微笑んでいた彼の心はもうここにはない。
彼のベッドの下に『真珠のピアス』を片方捨て、(間もなく結婚して)引っ越しする時に気付くでしょうという一見怖い女が垣間見れるのだけど、これはこの女の最大限の嫉妬なんでしょうね。
ベスト盤『Neue Musik:Yumi Matsutoya Complete Best Vol.1』および『日本の恋と、ユーミンと。 松任谷由実40周年記念ベストアルバム』『ユーミン万歳!〜松任谷由実50周年記念ベストアルバム〜』に収録されている。また、ライブ音源が『YUMING VISUALIVE DA・DI・DA』に収録されている。
どこかで半分失くしたら 役には立たないものがある


3. ランチタイムが終わる頃
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

カーペンターズのような優しいピアノで始まる失恋ソング。
強がり女性の独りのランチタイムをうたったものだが、曲が進むにつれ演奏が賑やかになってゆき、それが余計にせつなさを誘う。
『真珠のピアス』の主人公だと思うと余計に沁みてくるよね。
ベスト盤『SEASONS COLOURS-春夏撰曲集-』収録。


4. フォーカス
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

彼に出会ったことで変わった私。
だけれど私の心のフォーカスは彼に合ったまま変わらないわ!…そんな恋愛中のレディの高まる気持ちをAORに乗せて歌う。
ベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた 松任谷由実45周年記念ベストアルバム』に収録されている。
憶病な部屋から私を
はじめてよ つれ出してくれたの
世界中がぼやけても 心のフォーカスは
あなたに合ってるから


5. 夕涼み
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

このイントロを聴くと蒸し暑い夏の風景が見えてくる。
夏の蒸し暑さ、儚さ、夏の終わりの寂しさを描いていて、終わって欲しくない時間を悲しすぎる記憶と綴る。
由実さんの夏の歌ってどこか寂しさとリンクしているような気がする。
ベスト盤『ユーミンからの恋のうた 松任谷由実45周年記念ベストアルバム』、『sweet,bitter sweet〜YUMING BALLAD BEST』『SEASONS COLOURS-春夏撰曲集-』に収録されている。


6. 私のロンサム・タウン
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

ここで一息。
由実さんは結婚したら音楽を辞めようと思っていたそうですが、自分たちの会社のことなんかを考えると結局それはできなかった。
そんな時、新潟のホテルで自分の人生について考えたときのシチュエーションを描いた曲だそうです。
歳を取ってもライトを浴びてバンドと一緒に歌い続けることを思い描いていたんですね。
シンプルなアレンジの曲だけど、そのまったり具合が心地よくて非常に好きです。
クールダウンしたドラムとゆったりしたエレピ、いつまでも聴いていたくなる。
アルバムのジャケット(アートワーク)には歌ってる由実さんが絵画として飾られています。いかに重要な曲が察せる。
ベスト盤『SEASONS COLOURS-秋冬撰曲集-』収録。


7. DANG DANG
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

失恋した女性のうた。当初のタイトルは『土用波』だった。
アルバム曲ながらベスト盤『Neue Musik:Yumi Matsutoya Complete Best Vol.1』、『日本の恋と、ユーミンと。 松任谷由実40周年記念ベストアルバム』、『SEASONS COLOURS-春夏撰曲集-』に収録されている。また、ライブ音源が『YUMING VISUALIVE DA・DI・DA』に収録されており、松曲といえるのではないでしょうか。
フジビデオカセット『SUPER HG』CMソング。

彼女は知らないなら
友達になるわ
それしかあなたに会う
チャンスはないもの 今は

ビデオ作品『コンパーメント TRAIN OF THOUGHT』でミュージックビデオが撮られている。
歌詞のこの部分がやっぱりせつないな。

せまいこの街で顔を合わせ
交す微笑みに胸を痛め
ああ少しずつ ああ少しずつ
何にも感じなくなってゆくのね

1983年、金子マリさんがカバーアルバム『MARI FIRST』でカバー。
day after tomorrowというユニットの『CURRENT』のサビがこれに似てる気がする。
フジビデオカセット『SUPER HG』CMソング。


8. 昔の彼に会うのなら
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1976 FUJI PACIFIC MUSIC,INC.

昔の彼との再会を歌ったものではなく、再会を想像する歌。
オチは、思い出はさわらないほうがいいと締めくくられる。現実的な女性だ。
時の女神の気紛れで
二人はきっと変わったわ
夢はさわらぬ方がいい
いたずらに いたずらに

荒井由実として1976年にPONY TAILに提供した『二人は片想い』の歌詞違いだそうです。
曲自体は別モノとして登録されている。


9. 消息
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

駅のホームでの一コマ。
間奏の泣きのギターがなんともいえない。
バラード好きなので。アルバムを聴き始めた頃、よく聴いていた曲。駅のホームで見かけたかつての恋人との『再会』の場面をドラマティックに切り取っている。
ベストアルバム『sweet,bitter sweet 〜YUMING BALLAD BEST』に収録されている。


10. 忘れないでね
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1982 KIRARA MUSIC PUBLISHER

昔で言えば憎めない小悪魔的な女性?現在ならストーカー女みたいな。(笑)
彼女がいる男性を好きになった女性のうた、


RV




1978年から年に2枚のスタジオアルバムを発表していた由実さん。(これは伊集院静さんのアイデアだといわれている)
1982年でそれは途切れ、今作のみの発表となる。

グリーンを基調にしたアートワーク。
壁の左上側に飾られているのは歌っている由実さんを描いたと思われる絵画、そして右側には一見折り鶴のように見える楽譜が落ちるところ。
『私のロンサムタウン』であったり忙しさを感じさせる。

全ての曲の歌詞に『夏』を表しているわけではないけど、AORサウンドがもたらす空気感のようなものが全体を貫いている感じがして夏に聴きたくなります。

いつも思うのだけど、由実さんが描く『夏』や『海』はせつなさにリンクしているものが多い気がする。
激しくも儚く去ってゆく夏の背中。別に悲しいわけじゃないのに寂しさを覚える。
さみしい秋に向かうからなのだろうか?…

この作品はOLの日常に焦点を合わせて製作されたと言われていて、基本は恋愛のうたで構成されています。
由実さん自身のことを歌っている『私のロンサムタウン』はLP盤のB面の幕開けの曲なので、インタールード的な役割なのかなと思う。

サウンドは全体的に統一感があり、AORのテイストが貫かれており、一番賑やかな曲でも『DANG DANG』だったりするので、ロック的なアプローチは息を潜めている。
僕的にはこれくらいでも全然OKなんですけど。

夏ごとに聴いていますけど、改めて聴いても好きなことは変わらない。良いものは良い!
由実さんが創り上げたこの傑作を新しい、若い世代にも是非聴いてほしいと思う。
アルバム一枚しっかり聴いてほしいと思う。

この作品と同時期には松田聖子への楽曲提供が始まっており、渡す曲渡す曲がヒットしているので作家としての自信がみなぎっていた頃なのではないかと推察します。

この8か月後には次作の『REINCARNATION』、その更に9か月後に『VOYAGER』というように、1983年は再びスタジオアルバムを2枚発表。
この時期は出せば売れる状態になっていたようですが、この時の助走(品質保証)が、のちのユーミンブームの原動力となっていったのではないでしょうか。
ドリカムファンならスムーズに受け入れられる作品だと思う。たぶん美和さんも聴いてたと思うのね。

個人的評価:★★★★★★★★★★ 10



【SINGLE】

なし


PEARL PIERCE
松任谷由実
EMI Records Japan
2013-10-02






2023年6月29日再編集 TEN