松任谷由実 - アルバム - 時のないホテル
松任谷由実 9th Studio Album
時のないホテル
EXPRESS / 東芝EMI
1980年6月21日発売(LP : ETP-90002 / CT : ZT28-631)

▼カタログ
・CD化:1985年6月1日発売(CD : CA32-1135)東芝EMI
・リマスター:1999年2月24日発売(CD : TOCT-10642)東芝EMI
・品番違い:2013年10月2日発売(CD : TYCT-69039)ユニバーサルミュージック

timeless

Produced by Masataka Matsutoya
Featuring Masaki Matsubara on Guitar Solo
最高3位・21.1万枚

TL

1. セシルの週末
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

プロポーズを待つ女性の歌。
真璃子さんが1989年に11thシングルとしてカバー。


2. 時のないホテル
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

東西冷戦を風刺した曲。
ビデオ作品『コンパーメント TRAIN OF THOUGHT』(Directed by Storm Thorgerson)でミュージックビデオが撮られている。
ものを例えたりする能力が尋常じゃないですよね。


3. Miss Lonely
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

出兵したまま帰らない男性を想い待つ老女の歌。
反戦歌を作ろうとすればできるだろう、でもユーミンはそんな柄じゃない。
ここでは一人の女性を題材にして戦争がもたらす哀しみを暗に示している。


4. 雨に消えたジョガー
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

Myelogenous Leukemia(骨髄性白血病)を患ったランナーを歌った曲。
ボートに乗る=死ぬ。これは『水の影』のゴンドラに繋がりますね。


5. ためらい
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1977 NICHION,INC.

重い曲が3連続だったので、なんか救われた気分に(笑)
シングル『白日夢・DAY DREAM』のB面。
原曲は1977年に萩尾みどりさんに提供した『大連慕情』のB面。


6. よそゆき顔で
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

強気な女性像というのがユーミンの曲には度々登場しますが、この曲はそんな悪ぶってた自分を捨てるという歌。コーラスアレンジは杉真理さん。
歌詞に観音崎が出てきます。
久里浜のほうに行く途中、車でこの曲を聴きましたよ。


7. 5cmの向う岸
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

サウンド的には一番明るいのかな。
主人公より5cm背の低い男の子との恋愛、別れを歌ったもの。
若い時は人の目というのが気になります。


8. コンパートメント
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 KIRARA MUSIC PUBLISHER

7分を超える大作で、薬を飲んで自殺する歌。
イギリスのテムズ川が出てくる。ジャケット写真はロンドンで撮影。


9. 水の影
(作詞:作曲:松任谷由実・編曲:松任谷正隆)
(C) 1980 Kirara Music Publisher

ユーミンの名曲、数あれど名曲中の名曲と言い切れる。
水に映る自分の影に人との別れを想い巡らせたもの。
ゴンドラというとユーミンが名付けた苗場のドラゴンドラが連想されるのだけど、この曲で出てくるゴンドラは船のほうですね。

よどみない浮世の流れ
とびこめぬ弱さ責めつつ
けれど傷つく心を持ち続けたい


自分もそうだけど人は傷つきたくない、だってつらいもの。
けれど、彼女は傷つく心を持ち続けたいと歌う。
なぜなら傷つくという感情があるのは生きているから。
最後のストリングスはAメロのメロディーでそれがまた壮大で良いんですよ。


RV

時のないホテル
松任谷由実
EMI Records Japan
2013-10-02




1980年発表の由実さんの9thアルバム。

『時のないホテル』は決して派手なアルバムではない、というか初めて聴いた時に地味な作品だなと感じました。
ロンドンのブラウンズホテルでのジャケット撮影、イングランドを流れるテムズ川、などのヒントから由実さんなりのUKロックを表現したのかななんて妄想してみたり。
よくUKロックは曇り空のようだと例える方がいます。どこか退廃的で陰があるというか…アメリカンロックの突き抜ける感じや雄大さとはまた違いますよね。

少女性の強い『セシルの終末』『ためらい』『5cmの向こう岸』が緩衝材になっているものの、東西冷戦を風刺した『時のないホテル』や戦地に行った相手を待ち続ける年老いた老婆を歌った『Miss Lonely』、『雨に消えたジョガー』『コンパートメント』といったヘビーな題材の曲が共存している。
サウンド自体は統一感が合って非常に聴きやすく仕上がっている。ドラムは渡嘉敷さんや青山純さんが参加。
また、このアルバムは松原正樹さんのギター・ソロがフィーチャーされているということでギターキッズもそのテクニックを味わうことができる作品ではないだろうか。

『水の影』で結ばれるこのアルバム…実は由実さんの作品の中でも、かなり重い一枚かも。
ちなみにアルバム発売の前月に発売された『白日夢・DAY DREAM』と翌々月に発売された『星のルージュリアン』(ドラム:青山純)はこのアルバム用に制作されたことが由実さんのインタビューで明らかになっているが結果的に収録されなかった。
『星のルージュリアン』は季節ベストに収録されたが、『白日夢・DAY DREAM』は収録されていない。いずれもiTunesでリマスター音源が配信されている。

個人的評価:★★★★★★★★★☆ 9








【SINGLE】

・『ESPER』(本作には未収録)
C/W 『よそゆき顔で』

・『白日夢・DAY DREAM』(本作には未収録)
C/W 『ためらい』

・『星のルージュリアン』(本作には未収録)
C/W 『12階のこいびと』(『流線形'80』より)

次作は『SURF&SNOW』です。

時のないホテル
松任谷由実
Universal Music
1999-02-24